┃相続コラム | |
近年の高齢社会を見据え相続法の大きな見直しが行われました。 相続コラムでは、相続に関連する最新のあらゆるトピックをお届けいたします。 税理士の視点から分かりやすく解説し皆様のお役に立つコラムにしてまいります。 |
こんにちは、税理士・公認会計士の佐々木彰です。
今回はコロナ禍で今まで以上に効果が出る生前対策を紹介します。
コロナ禍で対策すべきことは① 節税対策と② 終活・認知症対策の2点です。
コロナ禍において、株式といった資産の評価額が下落しています。
評価が低いタイミングで(相続財産になる前に)子どもや孫に財産を移動させることで相続税を少なくすることが目的です。
またコロナにより自宅に引きこもることが増えています。
これからもしばらくはこの生活が続くかもしれません。
そうなると認知症のリスクが高まります。
人と接する機会が減ったコロナ禍は「認知症になりやすい・進行しやすい環境」といえます。
認知症になると、財産の処分等に制限がかかり、遺言なども作れません。
生前対策が一切できなくなります。
そのようになる前に動くことが大事です。
1.節税対策
コロナ禍では株式を筆頭に財産の評価額が減少しているものがあります。
このタイミングを利用して、子どもや孫に財産を移動させます。
1-1(中小企業の社長等向け)株式の移動
コロナ禍において上場企業の株価は下落しました。
そのため中小企業の株価算定において①「類似業種比準方式」もしくは②「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」の折衷方式で算定している場合、あなたの会社の株価が安くなっている可能性が有ります。
これは、「類似業種比準方式」という同じ業種の上場会社の株価を参考にする算定方法の影響で、なにもしなくても株価が安くなっているためです。
事業承継税制があるため、株式を後継者に贈与・相続させる際には税金を繰り延べることができる特例がありますが、デメリットとして① 他の相続人の相続税にはメリットが一切なく(むしろ相続財産になるので税金が増える)、また② 株式を売却すると繰り延べた税金を納める必要があります。
将来どうなるか誰にも分からないなか、選択肢はなるべく多く持っておいた方が賢明です。
もし事業承継税制を検討している方で遺言により後継者に相続させようと思っていたとしたら、一度株価を算定してみてください。
あまり贈与税がかからないようにできるのであれば、今年・来年・再来年での贈与を検討すると良いかもしれません。
1-2(全ての人向け)相続時精算課税
株価以外でも、8月29日に国土交通省が発表した基準地価によれば、地価が下落している地域が多数ありました。
今後の社会情勢や地域性も考慮する必要がありますが、保有している土地の地価がこれから回復していきそうな場合、「相続時精算課税」を利用する方法が考えられます。
相続時精算課税とは、2,500万円を限度に贈与税なく、子どもや孫に贈与できる制度です。
ただし贈与時には税金がかからないだけで相続時に税金がかかるのですが、評価額は贈与時の金額です。
そのためこれから値上がりしてく場合には、実質的に相続財産を減らし税金を少なくすることができます。
また収益物件(貸している不動産など)の相続時精算課税であれば、この収益物件が生み出す家賃などの利益は子ども・孫のものになります。
そのためこれも実質的に相続財産を減らし税金を少なくする効果があります。
早ければ早いほどメリットがあります。
相続時精算課税には① 取り消しができない② 暦年贈与ができないというデメリットがあります。
もし相続時精算課税を考えている場合には、税理士に相談してください。
2.終活・認知症対策
繰り返しになりますが、認知症になると生前対策が一切できなくなります。
親が元気なうちに生前対策をしてください。
2-1(全ての人向け)遺言を書いてもらう
遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言の2通りありますが、どちらも認知症になってしまうと利用できません。
① 自分で遺言を書こうと思う方へ(自筆証書遺言)
→「意外と難しい!自分で遺言を書いてみる」(2020年3月相続コラム)
② 自宅で自筆証書遺言を保管するのが不安な方へ
→「自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになります」(2020年7月相続コラム)
③ 公正証書遺言にしてみようと思う方へ
→「遺言書作成の流れ」(税理士法人TOS佐々木会計ホームページ)
遺言は書き直しができます。
現時点の気持ちをまとめるだけで大丈夫です。
2-2(全ての人向け)エンディングノートを書いてもらう
遺言とは違い、エンディングノートには法的な効力はありません。
しかし、遺言と違い自由に内容を書くことができます。
「どのような治療をしてほしいのか」など、遺言には書かない大事なことを残す役割がエンディングノートにはあります。
残された人に言葉・文字でなければ伝わらないことはたくさんあります。
それを伝えるのがエンディングノートです。
市販のエンディングノートでも良いですが、各項目が多く途中でやめてしまうという声も聞きます。
まず、「自分が認知症になった時に何をしてほしいか」ということから書くことをおススメします。
2-3(全ての人・特に事業をしている人向け)家族信託で対応する
認知症対策に最も有効なのが家族信託です。
家族信託を利用して子どもに財産の管理を任せることで、認知症後の財産の凍結を防止し、引き続き財産を活用・運用することができます。
そのため特に不動産などの事業を行っている場合は、不動産を家族信託しておくことが有効です。
逆に家族信託をしていないと親が認知症になってしまいますと不動産の大規模修繕や売却などができなくなってしまいます。
家族信託をする場合には、財産全体のマネジメントとご家族の理解・協力が必要です。
興味がある方は一度ご家族と一緒にTOS佐々木会計までご相談ください。
3.(全ての人向け)あわせて確かめたい:生命保険
コロナ禍とは直接関係ありませんが、もし生命保険に加入していない場合は保険の加入をおススメします。
それは生命保険には、法定相続人の人数×500万円までの非課税枠があるためです。
例えば、父と母と子ども2人の家族で、父が亡くなってしまった場合には1,500万円までの生命保険には税金がかかりません。
仮に預金としてもっていた場合には当然相続税がかかりますので、生命保険に加入することで節税になります。
ちょうどこの時期の保険会社からハガキがきていると思いますので、生命保険に加入しているか確かめてください。
もし加入していない・よくわからないというのであれば、保険会社から送られてくる書類をTOS佐々木会計まで持ってきてください。
どのような保険に加入するといいのかアドバイスいたします。
4.おわりに
生前対策は必ず行う必要があることではありませんが、実際に相続のとき・親が認知症になったときに「あの時〇〇しておけば良かったのに」と後悔してもどうにもなりません。
財産の多い・少ないということは関係なく、どのようなご家族であってもできる生前対策はあります。
必ず一度ご家族で話し合いし、相続に向けてなにをしていくのかを考えてみてください。
税理士を交えて相談したいという方は下のお問合せフォームからご連絡ください。
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