┃相続コラム | |
近年の高齢社会を見据え相続法の大きな見直しが行われました。 相続コラムでは、相続に関連する最新のあらゆるトピックをお届けいたします。 税理士の視点から分かりやすく解説し皆様のお役に立つコラムにしてまいります。 |
こんにちは、税理士・公認会計士の佐々木彰です。
先月のコラムで生命保険について軽く触れました。
概要のみ書いたため「よくわからなかった。詳しく教えてほしい。」とのお言葉を頂きました。
そこで、今回は生命保険について深掘りしていきます。
生命保険には保険契約する親だけでなく、相続する妻や子どもにとってもメリットがありますので、保険嫌いの人でも最低限利用してほしい内容になっています。
なお今回のコラムでおすすめする生命保険は、終身(解約返戻金がある)タイプの生命保険(死亡保険)のことで、理想は一時払いや払込期間が定められている(早く払い済みになる)ものです。
1.生命保険のメリット
生命保険の最大のメリットは、自分が亡くなった時に大きなお金を残される妻や子どもに残すことができるということです。
これは本来の生命保険の目的であり、ご存じだと思います。
その他に税理士の立場として、生命保険には2つのメリットがあります。
① 保険料を支払うのに、老後資金を減らさずに妻や子どものために節税できる
② 保険金の受け取る人を指定できる
2.なぜ老後資金を減らさずに、妻や子どものために節税できるのか
① 節税できる理由
まず生命保険には、法定相続人の人数×500万円までの非課税枠があります。
例えば、父と母と子ども2人の家族で、父が亡くなってしまった場合には1,500万円までの生命保険には相続税がかかりません。
3人(母、子、子)×500万円 = 1,500万円非課税
相続税の税率は「10%~55%」なので最小でも150万円、最大で825万円の節税効果があります。
② 老後資金が減らない理由
次になぜ保険料を払うのに老後資金が減らないのかというと、「死亡を待たずに保険を解約したとしても、すでに支払った保険料に近い金額が戻ってくるからです(これは契約する保険の内容等によって異なるので、契約することに十分に確認してください)。
そのため、万が一老後の生活が厳しくなったとしても現金化(換金)しやすく、土地購入等による節税のように、「自由に使えるお金がない」なんてことにはなりません。
他の財産と比較しながらまとめると下の表のようになります。
メリット | 預金 | 生命保険 (おすすめ) |
株 | 土地 |
節税効果 | × なし |
〇 非課税枠による節税効果あり |
× ほとんどなし |
◎ 評価方法によって大きく節税 |
預金への戻しやすさ (換金性) |
◎ |
〇 解約返戻金で戻ってくる |
〇 売買が容易にできる |
△ 他と比べると換金性は低い |
安全性 | ◎ |
〇 大きく価値が下落しない |
△ 価値が下落する可能性がある |
|
財産運用 | × 利息はほとんどなし |
〇 死亡時に大きく増える |
△~◎ 価値が高騰する可能性がある |
3.保険金の受け取る人を指定できるとは?
生命保険金は相続財産ではありません。
保険契約で決めた保険金の受取人の固有の財産として考えます。
その結果、遺産分割協議の対象から生命保険金は除外されますので、受取人は遺産分割協議が終わるのを待たないで、このお金を葬儀代等に自由に使用することができます。
預金は遺産分割協議が終わるまで凍結され、簡単には引き出せませんので、生命保険の便利さが分かると思います。
加えて、まだ遺言(遺言書)を書いていない人にとっては、自分の財産を誰に残すかを指定できるメリットがあります。
現在で遺言を書いていない人は多くいます(個人的には遺言が広まってほしいですが)。
そのような人にとって生命保険は、自分の財産を誰に残すかという意思表示になります。
4.保険の受取人の決め方でミス
生命保険の非課税枠を利用するためには、「保険の受取人を法定相続人」にしなければなりません。
そのため、下のように保険の受取人を孫にしてしまうと、非課税枠を利用できません。
また同じように、独身時代から契約している保険の場合、受取人が親になっているケースがあります。
この場合も受取人が親の場合には非課税枠を利用できません。妻か子どもに受取人を変更してください。
5.おわりに
今回の内容をまとめると、下に該当する人は生命保険を契約するメリットがあります。
〇 相続税を節税して妻や子どもの負担を少なくしてあげたい。
〇 老後が心配だから、なるべく備えは残しておきたい。
〇 財産運用は安定した方法が好き。
保険は必ずしもたくさん契約すれば良いというものではありません。
自分が何を大切にしたいかという点を大事にして、保険を利用してください。
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