┃相続コラム | |
近年の高齢社会を見据え相続法の大きな見直しが行われました。 相続コラムでは、相続に関連する最新のあらゆるトピックをお届けいたします。 税理士の視点から分かりやすく解説し皆様のお役に立つコラムにしてまいります。 |
こんにちは、税理士の佐々木彰です。
3月号のコラムで自筆証書遺言の書き方について紹介しました。
自筆証書遺言の現状としては、大半が自宅で保管しています。
しかし、自宅での保管の問題点としては、① せっかく書いた遺言を紛失するおそれ、② 相続人によって廃棄・改ざんのおそれがありました。
このような問題点を解決するために、公的機関である「法務局」が遺言書を保管してくれるという新制度が始まります。
また、裁判所で遺言書を確認する「検認」も不要なので、手続きが簡素化されています。
今回は新たに始まる「自筆証書遺言の保管制度」を紹介します。
1.「現状の問題点」と「自筆証書遺言保管制度のメリット」
自筆証書遺言は、書くための費用が安く、公証役場に行かなくても遺言を作成できるというメリットがありますが、その反面いくつか問題点があります。
・遺言を紛失する(書いた遺言をどこに隠したか忘れてしまった)
・裁判所による検認作業が必要(筆跡が違うという相続人が現れ、親族で裁判することに)
・遺言を書いたことを相続人に教えない(遺言の内容を見られるのをおそれ、遺言者が誰にも遺言の保管場所を教えなかった。)
これらの問題点を解決するために、自筆証書遺言保管制度ができました。
・遺言を紛失しない(書いた遺言を法務局で原本を保管し、データ化してくれる)
・裁判所による検認作業が不要(法務局が保管するため遺言の偽造の心配がない。そのため裁判所に行く手間が省ける)
・遺言を書いたことを相続人に教えても問題ない(遺言者の死後に限り、相続人が遺言の内容を確認できるので、死後まで遺言の内容を秘密にできる)
2.保管のための手続き
次の3つの中から、遺言を預ける法務局を決めます。
(1)自筆証書遺言をつくる
注意事項を確認しながら、書く必要があります。
どんなところに注意が必要か→3月号相続コラム参照
(2)遺言を預ける法務局を決める
次の3つの中から、遺言を預ける法務局を決めます。
① 遺言者の住所地を管轄する法務局
② 遺言者の本籍地を管轄する法務局
③ 遺言者が保有する不動産の所在地を管轄する法務局
(3)申請書をつくる
申請書は① 法務局の窓口もしくは② 法務省のHP(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00048.html)で入手できます。
申請書に必要事項(名前、住所、本籍、死亡時の通知の対象者等)を記入してください。
(4)遺言保管の予約をする(予約する必要があります)
① 法務局手続案内予約サービスの専用HPで予約
【専用HP】https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/
② 法務局への電話又は窓口で予約
ちなみに神奈川県であれば本局(横浜)、川崎支局、横須賀支局、湘南支局、厚木支局等になります。
(5)法務局に行き、保管してもらう
次の①~⑤ものを持参して、予約した日に本人が法務局に行く必要があります。
① 事前につくっておいた遺言書
②(3)で作成した申請書
③ 本籍の記載のある住民票の写し等(3か月以内)
④ 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)
⑤ 手数料(1通につき3,900円を収入印紙で支払う
(6)保管証を受け取る
保管証には、遺言を保管している場所の名称や、保管番号が記載されています
もし遺言の内容を変更する場合にも使います。失くさずにとっておいてください。
3.いつから遺言を法務局で保管してくれるのか
令和2年7月10日から始まります
また、HPからであれば7月1日から保管の予約が可能となります。
4.保管制度でも解決されていない「自筆証書遺言のデメリット」
自筆証書遺言の保管制度が始まることによって、自筆証書遺言は今まで以上に安心できる制度になりました。
しかし、まだ解決されていない点(デメリット)もいくつか存在します。
(1)法務局では、遺言の内容の確認はしてくれない
自筆証書遺言の書き方は簡単ではありません(3月号相続コラム参照)
可能であれば、保管制度を利用する前に、税理士等の専門家に確認してもらうと安心です。
(2)法務局では、遺言の内容について相談に乗ってくれない
遺言を作成するにあたって最も悩むのが「財産をどのように相続人に分けるのか」です。
「遺言者の気持ち」や「税金が少なくなる方法」等いろいろな視点から財産の分割を考えることが最も良い方法です。
そのためには一人で考えるのではなく、税理士と話し合い、考えをまとめながら分割方法を決めることが、遺言者も残される家族にとって一番ではないかと私は思います。
→ 自筆証書遺言のデメリットを解決するためには、税理士等の専門家に相談してください。
また、お話を聞いた結果「公正証書遺言」の方が良い場合もあります。
例えば、「死後に相続人で争わないための対策が必要」な場合です。有名人でいえば、「紀州のドンファン」の遺言のケースです。
あれは自筆証書遺言で残してしまったために、妻と兄弟で争うことになりました。
仮に公正証書遺言で残した場合は、問題にならなかったかもしれません。
このようなケースの他にも「(認知症等になる前に)遺言者の意思をしっかり残す方が良い」などの理由で公正証書遺言を選ぶ人もいます。
これらの問題点を解決するために、自筆証書遺言保管制度ができました。
5.おわりに
1通3,900円であり、自分で書いて預けるだけなので、自筆証書遺言の保管制度はとても良い制度です。
ただし注意しなければならない点もあります。遺言という失敗は許されないものであれば、税理士等の専門家に書いた遺言を見てもらうことや、相談に乗ってもらうことが良いと思います。
今回のコラムについて詳細を知りたい方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。
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