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こんにちは。横浜市南区井土ヶ谷で中小企業の後継者を支援している3代目税理士・公認会計士、佐々木彰です。
中小企業の決算書を見ていると、時々出てくる科目があります。
それが「役員貸付金」です。
社長にとっては、
「昔から残っているだけ」
「一時的に立て替えただけ」
「そのうち返す予定だから問題ない」
という感覚かもしれません。
しかし、役員貸付金は、単なる社長と会社の内部的なお金のやり取りとして片付けられないことがあります。
税務上の問題につながることもありますし、金融機関からの見え方、会社のお金の管理、将来の事業承継にも影響することがあります。
今回は、中小企業の社長が決算書を見るときに確認しておきたい「役員貸付金」について、なぜ放置してはいけないのかを整理します。
この記事はこんな方におすすめです
● 決算書に役員貸付金が残っている社長
● 会社と社長個人のお金の区別があいまいになっている方
● 銀行から決算書の内容を質問されたことがある方
● 将来の事業承継も見据えて会社の数字を整えたい経営者
目次
1.役員貸付金とは何か
役員貸付金とは、会社が社長や役員に対してお金を貸している状態をいいます。
たとえば、次のようなケースで発生します。
● 社長個人の支払いを会社のお金で行った
● 仮払金の精算がされないまま残った
● 役員報酬とは別に社長へ資金が渡っている
● プライベートな支出が会社経費として処理されず、貸付として残った
● 過去の処理をそのまま引き継いで残高だけ残っている
決算書では、役員貸付金は会社の資産として表示されます。
つまり会計上は、
「会社が社長に貸しているお金であり、将来返してもらう前提の金額」
という扱いです。
しかし、実際には何年も返済されずに残っていることも少なくありません。
ここに、問題の出発点があります。
2.役員貸付金が問題になる理由
(1)会社のお金が社長個人に流れている状態だから
役員貸付金は、言い換えれば、会社のお金が社長個人に移っている状態です。
会社は本来、仕入、給与、家賃、外注費、借入返済、納税など、事業のためにお金を使います。
その会社のお金が社長個人に流れているとなると、会社の資金管理として健全とは言いにくい面があります。
社長にとっては「自分の会社のお金」という感覚があるかもしれません。
しかし、会社のお金と社長個人のお金は別です。
この区別が曖昧になると、経営判断も資金管理も不安定になりやすくなります。
(2)税務上の問題につながることがあるから
役員貸付金は、税務上も注意が必要です。
たとえば、会社が社長に無利息または著しく低い利率で貸し付けている場合、通常受け取るべき利息との差額について、社長に対する経済的利益とみなされる可能性があります。
また、そもそも貸付といえる実態がなく、
● 返済予定がない
● 契約書もない
● 発生原因が不明確
● 毎年増えるだけで減らない
という状態であれば、実質的には役員給与や役員賞与に近いと見られるリスクもあります。
もちろん、個別事情によって判断は異なります。
ただ、「役員貸付金として処理しておけば大丈夫」というものではない、という点は押さえておく必要があります。
(3)金融機関からの印象がよくないことがあるから
銀行や信用金庫が決算書を見るとき、役員貸付金はよく見られる項目です。
金融機関の目線では、役員貸付金があると、
「会社のお金が事業以外に流れていないか」
「資金管理が甘くないか」
「社長個人と会社のお金が混ざっていないか」
「本当に回収できる資産なのか」
という見方をされることがあります。
役員貸付金は決算書上は資産ですが、実際には回収可能性が低いこともあります。
そのため、金融機関によっては、実質的には資産として高く評価しないこともあります。
つまり、役員貸付金が多額にあると、会社の財務内容を悪く見せる原因になり得ます。
(4)事業承継のときに後継者が困るから
役員貸付金は、今の社長の時代だけの問題ではありません。
将来、後継者が会社を引き継ぐときに、
「この役員貸付金は何なのか」
「返してもらえるのか」
「そもそも何に使ったのか」
「帳簿上だけ残っているのではないか」
という問題になります。
後継者から見れば、役員貸付金は非常に扱いにくい科目です。
回収できるならまだよいですが、実際には返済が難しいこともあります。
その場合、決算書に残っているだけで、会社の数字を分かりにくくし、承継後の経営判断をしにくくしてしまいます。
役員貸付金は、次の世代に引き継ぐ前に整理しておくべき科目です。
3.役員貸付金が発生しやすい場面
役員貸付金は、意図的に作られるというより、日々の処理の積み重ねで発生することが多いです。
たとえば、次のような場面です。
(1)社長個人の支払いを会社口座で行っている
クレジットカードの引き落としや個人の生活費などが、会社口座から支払われると、役員貸付金として残ることがあります。
(2)仮払金の精算がされない
一時的に仮払処理したものの、後から内容確認や精算をしないまま、最終的に役員貸付金へ振り替えられていることがあります。
(3)役員報酬では足りない分を都度出金している
正式な役員報酬とは別に、必要な都度お金を引き出していると、役員貸付金が膨らみやすくなります。
(4)前任者時代の残高がそのまま残っている
昔からある残高で、誰も中身を確認しないまま決算書に残っているケースもあります。
このように、役員貸付金は「ある日突然大きく発生する」というより、小さな処理の積み重ねで膨らんでいくことが多いのです。
4.今すぐ確認したい5つのポイント
役員貸付金がある場合は、次の点を確認したいところです。
① いつ発生したものか
最近のものなのか、何年も前から残っているものなのかで、対応の仕方が変わります。
② 何が原因で発生したのか
生活費なのか、立替なのか、仮払の精算漏れなのか。
発生原因が分からないものは、整理が難しくなります。
③ 返済予定があるのか
貸付である以上、返済予定の有無は重要です。
返済時期や返済方法が曖昧なままでは、実態として貸付といえるのかが問題になります。
④ 金額が適切な範囲か
少額の一時的なものと、多額で長期間残っているものとでは、問題の大きさが違います。
⑤ 利息や契約の整理がされているか
金額が大きい場合には、利息の取り扱いや貸付条件の整理も必要になります。
少なくとも、「どういう性質のものとして処理しているのか」は明確にしておく必要があります。
5.役員貸付金を整理するための考え方
役員貸付金があるからといって、すぐに一律の正解があるわけではありません。
ただ、放置せず、整理の方針を決めることが大切です。
考え方としては、次のような流れになります。
(1)まず中身を確認する
最初に行うべきことは、残高の中身の確認です。
何年分の、どのような支出が含まれているのかを整理します。
(2)本当に貸付でよいのかを見直す
内容によっては、貸付ではなく、役員報酬や経費精算、あるいは別の処理が適切な場合もあります。
ここは税理士と相談しながら慎重に判断する必要があります。
(3)貸付として扱うなら返済方針を決める
貸付である以上、返済が前提です。
返済の時期、方法、毎月の返済額など、現実的な方針を決めておくことが重要です。
(4)今後増やさない仕組みを作る
過去分の整理だけでは不十分です。
同じことが繰り返されないように、
● 会社口座と個人口座を明確に分ける
● 個人支出は個人で行う
● 仮払金の精算ルールを決める
● 役員報酬の金額を見直す
といった仕組みづくりが必要です。
役員貸付金の問題は、単なる会計処理の問題ではありません。
お金の管理の仕組みの問題でもあります。
6.まとめ:役員貸付金は「会社と社長のお金が混ざっているサイン」である
役員貸付金は、決算書の中でも軽く見られがちな科目です。
しかし実際には、
● 会社のお金が社長個人に流れている状態である
● 税務上の問題につながることがある
● 金融機関からの評価に影響することがある
● 事業承継のときに後継者を悩ませることがある
という意味で、決して軽い問題ではありません。
特に中小企業では、会社と社長個人のお金の距離が近くなりやすいものです。
だからこそ、意識して分けて管理することが大切です。
役員貸付金が決算書に載っている場合には、
「昔からあるから仕方ない」
「そのうち何とかする」
で終わらせず、まずは中身を確認してみてください。
役員貸付金は、単なる数字ではありません。
それは、会社と社長のお金の関係を見直すべきサインです。
決算書を整えることは、税務対策のためだけではありません。
会社の資金管理を強くし、金融機関との関係を整え、次の世代に引き継ぎやすい会社にするためでもあります。
もし役員貸付金が残っているなら、一度しっかり整理することをおすすめします。
ご不明な点等ございましたらお気軽にお問い合わせください。
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