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税務を取り巻く環境は、年々大きな変化を見せています。 このコラムでは、世の中の動きをプロの視点から できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。
7月号
役員報酬を「税金対策」だけで決めてはいけない
中小企業の社長が見直すべき3つの視点

こんにちは。横浜市南区井土ヶ谷で中小企業の後継者を支援している3代目税理士・公認会計士、佐々木彰です。

中小企業の社長から、よくご相談いただくテーマの一つに、

「役員報酬はいくらにすればよいか」

というものがあります。

役員報酬は、単に社長の給料を決める話ではありません。

会社の利益、法人税、社長個人の所得税・住民税、社会保険料、資金繰り、金融機関からの見え方、将来の退職金設計にも関係します。

ところが実際には、

「税金が少なくなるように」

「前期と同じくらいで」

「生活費に必要な分だけ」

「利益が出そうだから多めに」

といった感覚で決めている会社も少なくありません。

もちろん、税金を考えることは大切です。

しかし、役員報酬を税金対策だけで決めると、会社にも社長個人にも無理が出ることがあります。

今回は、中小企業の社長が役員報酬を決めるときに見直したい3つの視点を整理します。

この記事はこんな方におすすめです

 ● 役員報酬を毎年なんとなく決めている社長

 ● 法人税と個人の税金のバランスに悩んでいる方

 ● 会社にお金を残すべきか、社長個人に移すべきか迷っている方

 ● 事業承継や将来の退職金も考え始めている経営者


1.役員報酬は「会社」と「社長個人」の両方に影響する

役員報酬を増やすと、会社の利益は減ります。

その結果、法人税は少なくなる可能性があります。

一方で、社長個人の所得は増えるため、所得税・住民税・社会保険料は増えます。

つまり、役員報酬は、

会社側では

法人税・利益・資金繰り

社長個人側では

所得税・住民税・社会保険料・手取り

に影響します。

そのため、役員報酬は、

「会社の税金が減るかどうか」

だけで決めるものではありません。

大切なのは、

会社と社長個人を合わせて、無理のない形になっているか

です。

会社に利益を残しすぎても、社長個人の生活や資産形成が苦しくなることがあります。

反対に、社長個人に報酬を取りすぎると、会社の資金繰りや金融機関からの見え方に影響することもあります。


2.視点① 税金だけでなく、社会保険料も含めて考える

役員報酬を決めるとき、法人税と所得税だけを比較してしまうことがあります。

しかし、実際には社会保険料の影響も大きいです。

役員報酬が上がると、社長個人の社会保険料だけでなく、会社負担分の社会保険料も増えます。

つまり、報酬を上げた場合には、

● 個人の所得税

● 個人の住民税

● 個人負担の社会保険料

● 会社負担の社会保険料

● 会社の法人税

をあわせて見る必要があります。

表面的には、役員報酬を増やすことで法人税が減ったように見えても、個人側の税金や社会保険料を含めると、思ったほど有利ではないこともあります。

役員報酬を考えるときは、

法人税だけでなく、個人課税と社会保険料まで含めて判断する

ことが重要です。


3.見直すこと② 在庫・設備・借入の動きを確認する

役員報酬を高くすれば、社長個人の手取りは増えるかもしれません。

しかし、会社から見ると、毎月固定で出ていくお金が増えることになります。

中小企業では、役員報酬を上げすぎた結果、

● 納税資金が足りない

● 借入返済が重くなる

● 賞与や採用に使う資金が残らない

● 設備投資に踏み切れない

● 不測の支出に対応できない

ということが起こる場合があります。

社長個人にお金を移すことも大切です。

しかし、会社を長く続けるためには、会社にも一定のお金を残す必要があります。

特に、借入金がある会社や、今後採用・投資を考えている会社では、

役員報酬を支払った後でも、会社に必要な資金が残るか

を確認することが大切です。

役員報酬は、社長の生活費であると同時に、会社にとっては固定費です。

一度上げると、簡単には下げづらい面もあります。

だからこそ、決める前に資金繰りとのバランスを見る必要があります。


4.見直すこと③ 利益ではなく“使えるお金”を見る

役員報酬は、今だけの話ではありません。

将来の退職金や事業承継にも関係します。

たとえば、将来、社長が退職金を受け取る予定がある場合、毎年の役員報酬だけでなく、退職金を含めた全体設計を考える必要があります。

また、後継者に会社を引き継ぐ予定がある場合には、

● 会社にどれくらい内部留保を残すか

● 後継者の役員報酬をどう設計するか

● 先代社長の報酬や退職金をどう考えるか

● 株式評価や相続対策にどう影響するか

といった視点も必要になります。

役員報酬を毎年の税金対策だけで決めていると、将来の選択肢が狭くなることがあります。

特に中小企業では、会社と社長個人の財布が近いからこそ、

今の手取りだけでなく、将来の出口まで見ておくこと

が大切です。


5.まとめ:役員報酬は、社長の生活費ではなく経営判断である

役員報酬は、単なる社長の給料ではありません。

会社の利益、税金、社会保険料、資金繰り、借入、退職金、事業承継に関係する重要な経営判断です。

見直したいポイントは、次の3つです。

1.税金だけでなく、社会保険料も含めて考える

2.会社に必要なお金を残せているか確認する

3.将来の退職金・事業承継も見据える

役員報酬をどう決めるかによって、会社に残るお金も、社長個人に残るお金も変わります。

「去年と同じでいい」

「税金が少なくなればいい」

「とりあえず生活費分だけ取れればいい」

ではなく、会社の状況と将来を見ながら決めることが大切です。

役員報酬は、社長自身のためだけでなく、会社を長く続けるための設計でもあります。

毎年の決算前後に、ぜひ一度見直してみてください。

2026/07/01
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