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税務を取り巻く環境は、年々大きな変化を見せています。 このコラムでは、世の中の動きをプロの視点から できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。
6月号
遺留分に関する民法の特例について

「危機管理」

この言葉を連日テレビなどで報じられている日本大学アメフト部の問題で目にした方も多いのではないでしょうか。

また、この問題に関連して謝罪会見が行われましたが、一方は誠意ある会見だったと評価され、もう一方は不誠実な会見だったと酷評されていました。

そして、不誠実な会見によりアメフト部だけでなく日本大学の信頼までもが落ちてしまったのではないかと言われています。

信頼を築くためには長い年月を掛けて実績を積み上げる必要がありますが、失う時はあっという間だということは皆様もご存知だと思います。

では、なぜ大学側は信頼を落としてしまったのか、それは選手と大学側との会見に大きな違いがあるからだと私は考えています。

そして、選手が会見で発した「真実を明らかにすることが謝罪」という主旨の言葉がその理由を端的に表しており、真実をいかに明らかにするかということが大切なのです。

企業には様々な危機管理が求められていますが、私も今回の会見を拝見して危機管理のあり方について改めて考える必要があると痛感いたしました。

ところで、企業の様々な危機管理といえば、事業承継をスムーズに行うことも危機管理の1つであると言われています。

そこで、今回のコラムでは、事業継承をスムーズに行うための制度の1つである遺留分に関する民法の特例についてお伝えいたします。

■ 遺留分とは

被相続人は、基本的には遺言により自分の相続財産を自由に分配することができます。

しかし、無制限には自由に分配することはできず、配偶者や子などの相続人に一定の相続財産を受け取る権利を民法で認めています。

この相続財産を受け取るための権利のことを遺留分と言います。

■ 遺留分に関する民法の特例とは

遺留分は事業承継のための相続であっても効力が生じます。

しかし、中小企業などで自社株式を後継者に集中して贈与し事業を継続させたい場合、円滑な事業承継ができずに問題が出てしまう恐れがあります。

そこで、中小企業における円滑な事業承継を目的として遺留分に関する民法の特例の規定が設けられました。

■ 合意について

遺留分に関する民法の特例を受けるためには、推定相続人全員と書面による合意書を作成する必要があります。

また、合意の方法については主に以下の2つがあります。

1:除外合意

除外合意とは、後継者が経営者からの贈与等により取得した株式等について、遺留分の対象から除外する合意のことです。

後継者以外の相続人から「株式」の遺留分の請求ができなくなり、自社株の分散を防止することができます。

2:固定合意

固定合意とは、後継者が贈与した株式等の価値を予め合意時の評価額で固定する合意のことです。

例えば、相続時に株価が上がっていた場合でも、予め評価額を固定し遺留分を確定することで想定外の遺留分の増加などを防ぐことができます。

なお、除外合意と固定合意のどちらか一方、または、双方の合意を行うことが可能です。

■ 特例を受けるための要件

遺留分に関する民法の特例を受けるための主な要件は以下のとおりです。

・会         社:中小企業であること

合意時点で3年以上事業を継続していること

非上場企業であること

・現経営者:過去または合意時点で会社の代表者であること

・後  継  者:合意時点で会社の代表者であること

現経営者からの贈与等により、会社の議決権の過半数を保有していること

以上が、遺留分に関する民法の特例についてです。

近年、企業では拡散性が高く双方向性の情報配信ツールであるSNSなどネットを活用することが普及しています。

SNSなどは、ビジネスにおいて便利なツールの1つなのですが、一つ間違えると炎上と呼ばれる非難が殺到することで企業の信頼を失う可能性もあるのです。

ネットが身近になった現在では、非難が殺到することはどの企業でも起こりうるリスクとして危機管理体制の整備は重要だと私は考えています。

最後に、本当の企業の危機とは、不本意にも起きてしまった事故や過失などのことではなく、それらの対応を間違えることで危機が大きくなり最終的に信頼を失うことだと私は考えております。

今回のコラムについて詳細を知りたい方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。

2018/06/01
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