あけましておめでとうございます。
先日、一年の世相を漢字一文字で表す「今年の漢字」が「金」に決まった事が発表されましたね。
確かに、昨年は地震や火事などの甚大な被害といった悲しい出来事もありましたが、オリンピックのメダルラッシュやノーベル賞の受賞など、多くの人々に感動をもたらす輝かしい出来事も多かった1年でした。
そのような中、私にとっての「今年の漢字」は何かと考えてみたのですが、「継」という言葉だったと痛感しております。
その理由は、仕事柄、相続という皆様の財産を受け継ぐお手伝いをさせていただく機会が多かったこととノーベル賞を受賞した大隅さんの研究成果と共に賞金の使い道に対する回答に私はとても感銘を受けたからです。
その大隅さんの回答とは、自分のためではなく、この快挙を未来に継承するため「若い人たちをサポートできるシステムに使いたい」という素晴らしい回答だったのです。
ところで、継承といえば税務の世界にも事業継承という制度があります。
そこで、今回のコラムでは同族会社継承時(相続)における問題と対策についてお伝えします。
■ 会社承継の問題点
1:同族会社の社長は後継者に何を承継するのか
① 無形財産の承継
会社の事業を継続するための、業務知識、経験、人脈、経営ノウハウ、そして経営に対する信条、価値観などです。
最も重要なものです。
② 資産の継承
経営権や支配権の確保のために、自社株、不動産などの事業用資産。
社長の所有している不動産の上に会社があれば、その不動産も必要です。
(その結果、親族間での相続争いのもとになります。)
2:同族会社として特有の問題
① 後継者となるべき候補者が少ない。経営の資質と意欲を持つ後継者がいるとは限らない。
② 社長が個人財産を事業のために提供をしている。
③ 他の相続人に、公平な財産分配ができにくい。
④ たとえ後継者1人が承継した場合でも、多額の相続税が課されるとこがある。
3:資産の継承、後継者に持たせる「経営支配権」を確立する方法
① 後継者へ自社株を集中させる
自社株の3分の2の議決権を保有する。買収のリスクに備える。
② 不動産等の事業用資産を自由に利用処分できるようにする
不動産等の事業用資産は、その大半が経営者自身の所有物になっているケースが多い。
その不動産を承継させる。経営権と所有者を一致させる。
4:遺留分を主張されない対策
後継者となった方は、先代の経営者が生きているうちに遺留分を持つ人全員との間で、事業承継の対象となる事業用資産、株式を「遺留分の計算」から除く合意を得ることができます。
ただし、経済産業省の確認と、家庭裁判所の許可が必要です。
■ 税務対策
1:相続時点における同族会社の株価評価
① 類似業種比準価格
② 純資産価額
ほとんどの同族会社は、①と②の併用方式になります。
(純資産価格がマイナスの時、株式評価額は残念ながらゼロになります。)
①の類似業種比準価格は、同業者の配当金、年利益金額、純資産額と比べて、当社がどれくらい上か下かで、評価をします。
②の純資産価額は、当社の貸借対照表の金額ですが、時価に評価替えをする科目があります。
土地、建物、所有株式などで、現在の価格で評価をします。
ただし、純資産額がプラスで、最近2期連続して、配当がゼロ、利益がマイナスの時は、株価が高くなります。
計算式が「類似」×25%+「純資産」×75%になります。
2:株価引下げ
① 退職金の支給
相続時には、代表者の遺族に退職金を支払うと思いますが、過大でない限り、退職金は株価を引き下げます。
生前に株を移動する生前対策時にも大変有効です。
退職金をなるべく高くする方法として、
役員退職金規定を作る。
月額報酬を高くしておく。
② 類似業種比準価格を下げる方法
実はあまりありません。
もちろん節税対策を万全に行って利益を圧縮することは重要です。
ただし、不必要な支出は、何のプラスになりません。
配当を少なくすれば、純資産額が増加します。
③ 不動産投資
不動産投資は、株価を引き下げます。
土地の評価、路線価は、時価の80%です。
確実な収益物件なら、行うべきでしょう。
④ 従業員持ち株会の利用
従業員持ち株会に株を持たせるという対策がありました。
社長の株式は少なくなって、財産は減少しました。
現在はこれが大変な問題になりました。
事業承継では、株式の集中が大変重要だということに気が付きました。
持ち株会制度はお勧めできません。
⑤ 株の贈与
株価を下げるという方法ではありませんが、後継者に毎年地道に株を贈与することは必要です。
以上が、同族会社継承時(相続)における問題と対策についてです。
会社の信頼を築くことは、研究結果と同じですぐに答えがでるものではありません。
会社を継承するということは、いかに技術や人脈など今まで築き上げたお客様への信頼も受け継ぐかが大切であり、次世代の風により日本経済全体が更なる発展をしてくれることを願います。
今年も皆様からより信頼される事務所として、また皆様の大切な想いを次世代へと受け継ぐお手伝いをさせていただくためスタッフ一同努力してまいります。
最後になりましたが、今年1年の皆様方の皆様のご健勝と益々のご発展を心よりお祈りいたします。
今回のコラムについて詳細を知りたい方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。
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