「みんな元気でくらして下さい。さようなら。」
この言葉は、今から31年前に起きた日航機墜落事故で、死を覚悟した乗客が家族に向けて綴った最期の言葉です。
家族全員の名前と共に綴られたこの20文字に込められた想いは、自分をずっと励まし支え続けてくれた宝物だとご遺族の方は語っていたそうです。
最期の言葉はたった一言ではありますが、生命の危機が迫るなか封筒に走り書きされた言葉には魂が宿り、それ故私の心にも深く刻まれる言葉なのかもしれません。
今現在、そのご遺族は小学校の教員となり、教え子たちに「「行ってらっしゃい」と見送った相手に二度と会えないこともあるんだ」と父の言葉から学んだ命の尊さを教えているそうです。
父の想いを次の世代に伝え残すことができる教員の道を進んでいるということに、私は何故か万感胸に迫るものがありました。
当たり前のように日常を過ごせることはとても幸せなことで、私も日々に感謝しなければいけないとご遺族の言葉から教わりました。
ところで、税務の世界でも遺言書に最期の言葉を記すことができることをご存知でしょうか。
そこで、今回のコラムでは遺言書についてお伝えいたします。
■ 遺言書について
遺言書は、満15歳に達した人なら原則として誰でも書くことができます。
遺言書の種類や効力については、以下のとおりです。
・遺言書の種類
遺言書の種類には主に以下の2つがあります。
1:自筆証書遺言
遺言書の全文を本人が自筆で書く方法のことを自筆証書遺言といいます。
・家庭裁判所の検認手続きが必要
・ワープロでの作成や代筆は無効
2:公正証書遺言
公証人によって公証役場で遺言書を作成する方法のことを公正証書遺言といいます。
・家庭裁判所による検認手続きは不要
・原本は公証役場で半永久的に保管
遺言書の作成費用はかかりますが、遺言能力などでの争いが避けられることや家庭裁判所での検認が不要なことからも公正証書遺言をお勧めいたします。
・遺言書の効力
遺言書に書いて効力が生じる主な事項は以下のとおりです。
1:相続に関すること
・相続分の指定や遺産分割方法の指定など
2:財産処分に関すること
・遺贈や寄付行為など
3:身分に関すること
・子の認知など
4:遺言の執行に関すること
・遺言執行者の指定など
■ 遺留分減殺請求について
遺留分とは、法定相続人が最低限相続できる割合のことで、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子・孫、親・祖父母)に遺留分が認められています。
この遺留分を請求する権利のことを遺留分減殺請求といいます。
また、遺留分減殺請求を行使できるのは、減殺すべき贈与もしくは遺贈があったことを知った時から1年以内、もしくは相続開始の時から10年以内と定められています。
例えば、遺言書で特定の1人に全財産を譲ると書いていたとしても、遺留分減殺請求が行使された場合には、遺留分権利者にその相当額を渡す必要がでてきます。
そのため、遺言書を作成する際は、遺留分を考慮して遺言書を作成しなければなりません。
■ 付言事項について
遺言書に書いて効力が生じるものは法律で決まっています。
しかし、法的な効力はありませんが、遺産分割の方法に対する想いや家族に伝えたいことなどを自由に付言事項として書くことができます。
残されたご家族が余計な争いを起こさないよう、付言事項で遺言内容の説明をすることも大切です。
以上が遺言書についてです。
私は、遺言書は「家族への最期の手紙」だと考えています。
皆様もぜひ遺言書で、魂の宿った最期の言葉を綴ってみてはいかがでしょうか。
そして、あなたは最期の言葉としてなんと記すのでしょうか。
今回のコラムについて詳細を知りたい方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。
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