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税務を取り巻く環境は、年々大きな変化を見せています。 このコラムでは、世の中の動きをプロの視点から できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。
3月号
TPPと知的財産について

先日、温かいお茶を飲みながら大福を一口頬張ると私は絶句しました。

なんと、大福の中からミカンが顔を出したのです。

そして、これが餡子の甘みとミカンの程よい酸味とが絶妙にマッチして、何とも言えぬ美味だったのです。

皆様の中にまだミカン大福を食べたことがない方がいらっしゃいましら、ぜひ一度ご賞味ください。

ところで、日本人は大福にミカンを入れるといったような今あるものから新しい物を作ることが得意だそうです。

特に、二次創作と言われる、原作に登場するキャラクターを利用して新しい作品を作る文化が日本には存在します。

その背景には、他国とは違い日本は二次創作に関して寛容な国であるということがあるのではないかと感じています。

しかし、その二次創作が今話題のTPPへの参加によって規制を受けるのではないかという議論が出ています。

そこで、今回のコラムではTPPと知的財産についてお伝えいたします。

■ TPPとは

TPPとは、正式名称は「Trans-Pacific Partnership」で、日本・米国を中心とした環太平洋地域による経済連携協定(EPA)のことです。

日本は、2013年7月より正式参加を表明し、昨年の10月に大筋合意に至りました。

これにより5年程度をめどに段階的に関税が撤廃されることが決定しています。

■ TPP参加による影響

TPP参加による影響として以下のようなメリットとデメリットが考えられています。

1、メリット

・関税の撤廃により貿易の自由化が進み日本製品の輸出額が増大する

・整備・貿易障壁の撤廃により、大手製造業企業にとっては企業内貿易が効率化し利益が増える

・グローバル化を加速させることにより、政府の試算ではGDPが年間2700億円増加する可能性がある

2、デメリット

・海外の安価な商品流入によりデフレを引き起こす可能性がある

・関税の撤廃により安い農作物(特に米)が流入し日本の農業にダメージを与える

・食品添加物・残留農薬などの規制緩和により食の安全が脅かされる

・医療保険の自由化・混合診療の解禁により国保制度の圧迫や医療格差が広がる可能性がある

■ 著作権侵害の非親告罪化について

TPPは加盟国間の貿易や投資の自由化とルールの共通化が柱になっています。

ニュースでは関税の撤廃や農業への不安などが取り上げられていますが、著作権についてもルールの共通化により大きく変わる点が幾つかあります。

そして、その1つに著作権侵害の非親告罪化があります。

著作権侵害の非親告罪化とは、今まで著作権の侵害があった場合には、一部例外を除き原則として著作権者が告訴しなければ罪に問われることはありませんでした。

それがTPPへの参加により、著作権者などの告訴がなくても起訴できるようにする非親告罪とすることが決まりました。

日本では、特にアニメや漫画などを二次創作する同人誌と呼ばれる創作活動が活発に行われています。

それらの活動は、敷居の低い二次創作で腕を磨くことがクリエイターとして世に出る切っ掛けになり得るという若手育成の場になっているそうです。

著作権侵害の非親告罪化によりそれらの活動ができなくなるのではという不安の声が多く上がっており、政府は二次創作の同人誌は原則対象外とするとしていますが今後の展開に注目が集まっています。

以上が、TPPと知的財産についてです。

日本では、特に漫画の二次創作が活発に行われており、多くの漫画家の理解により若手クリエーターの育成や漫画文化の発展のために著作権侵害を黙認しているそうです。

ある漫画家の方は、TPPによって万が一漫画の二次創作が難しくなる場合に備え、特定の条件下での二次創作を黙認する意思表示マークを漫画に表示することも提案しているそうです。

このように世界に誇れる漫画の技術や文化を守るために自分の権利を黙認することは、日本人特有の心意気だそうで日本人の素晴らしさを改めて実感しました。

実は、税理士制度についもTPPの影響を受けるかもしれないと言われています。

日本では、税理士の資格を国家資格とすることで専門性など税理士への信頼感を国民に担保しているという一面もあります。

しかし、もしTPPの影響により外国税理士制度などの創設を新たに求められた場合、他国では税理士制度がない国などもあるため今までと同等の税務業務が遂行できるのかという懸念が上がっています。

TPPへの参加は色々なところへ影響を与えそうですが、二次創作を黙認する意思表示マークのように税理士制度も含め国民が安心や納得して受け入れることができる制度整備も同時に必要だと考えています。

今回のコラムについて詳細を知りたい方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。

2016/03/01
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