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税務を取り巻く環境は、年々大きな変化を見せています。 このコラムでは、世の中の動きをプロの視点から できるだけ分かりやすく解説していきたいと思います。
7月号
株式譲渡益・配当の軽減税率廃止とNISAについて

「3,776」

この数字を見ただけで、すぐに「富士山!」と連想する方も多いのではないでしょうか。

この数字は、富士山の標高「3,776m」を表す数字で、私も皆さんと同じく「みななろう(3776)」というゴロ合わせで覚えたものです。

ところで、富士山と言えば先月世界文化遺産に登録されました。

昔から、日本人にとって特別な山である富士山ですが、今回の世界遺産への登録により、その姿にますます威厳が増したように感じるのは私だけではないと思います。

しかし、今回の世界遺産への登録は、名誉や観光促進への期待と言ったプラスの効果だけではなく、いくつかのマイナスの効果を生んでしまう可能性もあることが心配され始めています。

主な内容としては、以下のとおりです。

・ゴミ問題の深刻化

観光客のマナー違反によるゴミ問題のさらなる深刻化

・登山事故の増加

登山者全体の30%を占める弾丸登山者が増えることでの事故の増加

・景観の問題

観光客を見込んだ各種施設の急増による景観問題

・交通量の増加

周辺地域の渋滞悪化、排気ガス・騒音・振動の増加

特に、富士山のゴミ問題は世界遺産への登録前から深刻で「世界一汚い山」とまで言われています。

マイナスの要素ばかり書いていると、私が世界遺産登録を喜んでいないように感じさせてしまったかもしれませんが、決してそんな事はありません。

むしろ、登山経験はほとんど無いにも関わらず富士登山を考え始める程喜んでいます。

このように、物事には常に光と影という二面性があるものです。

税務の世界も例外ではなく、税制度においてもプラスの面だけでなく制度について理解をしていなかった事により、思わぬマイナスな結果となってしまう場合も多く見られます。

そこで、今回のコラムでは、株式譲渡益・配当の軽減税率廃止とNISAについてお知らせしたいと思います。

■ 株式譲渡益・配当の軽減税率廃止について

株式譲渡益・配当などに係る軽減税率の特例措置が平成25年12月31日をもって廃止されることが、平成25年度税制改正大綱で明らかとなりました。

平成26年1月1日からの税率は、以下のように変更になります。

・現行:10%(所得税7%・住民税3%)

※復興特別所得税を合わせると10.147%

・廃止後:20%(所得税15%・住民税5%)

※復興特別所得税を合わせると20.315%

今回の軽減税率廃止によって、株式を今年中に売却した方が良い場合もありますので、株式を保有している方は注意が必要です。

■ NISAについて

NISAとは、正式名称「少額投資非課税制度」の愛称で、軽減税率廃止に伴って同時期より適用開始される個人投資家のための新制度のことです。

NISAの主な概要は以下のとおりです。

・制度対象者:20歳以上の日本国内居住者

・非課税対象:上場株式など、公募投資信託の配当や譲渡益

・非課税投資枠:新規投資額で年間100万円が上限

・非課税期間:最長5年間

・投資可能期間:平成26年~平成35年(10年間)

・口座開設数:1人につき1口座

また、NISA利用時の注意点は以下のとおりです。

・NISA専用口座の開設が必要

・開設できる口座は1人1口座のみ

・口座開設後、金融機関の変更は不可

・非課税枠の未使用分を翌年へ繰り越し、売却した非課税枠の再利用は不可

・既に保有している上場株式などは対象外

・他の口座との損益通算・損失の繰越控除不可

この新制度は、株式等の売買に係る税金が非課税になる制度のため、株式を保有し続ける場合には大きなメリットはあまりありません。

また、売却益は非課税になるというメリットがある一方で、売却損の場合には、以前よりも税額が高くなる可能性があるということに注意する必要があります。

このような制度のデメリットも十分に理解して上で、この制度を有効活用していだきたいと思います。

以上が、株式譲渡益・配当の軽減税率廃止とNISAについてのお知らせです。

最後に、今回の税制改正がプラスとマイナスの側面を持つように富士山の世界遺産登録に伴うマイナスな側面についてもしっかりと課題を認識し、前向きな対策を行っていく事が必要です。

私も富士登山をした際は、自分が出来る範囲でゴミの回収などを心がけ外国からくる観光客の方に「富士山は世界一美しい山」と感じて貰えるように微力ながらご協力できればと考えています。

2013/07/01
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