「これ小判 たつた一晩 居てくれろ」
「誹風柳多留(はいふうやなぎだる)初篇」(明和2年)に、こんな哀愁漂う有名な川柳があるのを皆さんはご存じですか。
給与が年に2回だった江戸時代は「つけ」で買い物をするため、稼いだお金(小判)は、つけの清算のためすぐに右から左に消えてしまいます。
この川柳でも、そのやっと手にした小判に対して「一晩だけでも自分の手元に居て欲しい」という庶民の想いが伝わってきます。
その想いは、まるで現代サラリーマンのローン返済を彷彿させますが、時代の経過とともに「つけ」が「ローン」と呼ばれるようになった今でも、その哀愁は変わらないものなんですね。
現代サラリーマンの哀愁をコミカルに表現している「サラリーマン川柳」の100選が今年も発表されました。
私は毎年楽しみに拝見していますが、今回も共感できる川柳がたくさんあり、思わず笑みがこぼれてしまいました。
数ある川柳の中でも、やはり「給与」や「妻」に対する嘆きや愚痴が多く見られますが、時代を表現する言葉は変わっても、サラリーマンの悩みは同じだということが伝わってきました。
そこで、今回のコラムでは、サラリーマンの方に少しでも役立っていただけることを期待しつつ「給与所得者の特定支出控除制度の改正」についてご紹介します。
給与所得者の特定支出控除制度とは、職務に直接必要な資格の取得費など特定の支出をした場合で、特定支出控除額の適用判定の基準となる金額を超える時は、確定申告することでその超える金額を所得から差し引くことができる制度です。
そして、平成24年度税制改正により以下の2点が改正されました。
■ 給与所得者の特定支出控除制度の改正点
1:特定支出の範囲の拡大
平成25年分以後は、特定支出の範囲に次に掲げる支出が追加されます。
(1)職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明がされた、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費
(2)次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの
イ 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するもの及び制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用
ロ 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出
2:特定支出控除額の適用判定基準の引き下げ
平成25年分以後は、その年の特定支出の額の合計額が、下記のとおり引き下げられます。
・年収1,500万円以下:その年中の給与所得控除額 × 1/2
・年収1,500万円超:125万円
特定支出控除を受けるためには確定申告を行う必要があり、平成25年分の申告は、来年度の確定申告で行うことになります。
今のうちから必要な領収書はきちんと保管しておいてください。
以上が、給与所得者の特定支出控除制度の改正についてのご紹介です。
最後に、サラリーマン川柳では妻への嘆きや愚痴が多いですが、実際は今まで支えてくれた妻へ感謝している方も多いのではないでしょうか。
口頭で直接感謝を伝えるのは恥ずかしいことかもしれませんが、今回ご紹介した制度などを活用して戻ってきたお金で、たまには二人で外食に行ったり、同じ趣味に興じてみたりするのもいいかもしれません。
ただし、急に優しくすると、普段とのギャップであらぬ疑いをかけられることもありますから注意が必要です
まあ、そのひと悶着から、思いもよらない傑作が生まれるかもしれませんが。
今回のコラムについて詳細を知りたい方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。
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